伝統工法の雨仕舞いの考えは。白川郷・五箇山の合掌造りの屋根

岐阜県白川郷・富山県五箇山の合掌造り。在住遺産集落として有名です。この伝統工法は積極的に水の通り道を作るという発想にあります。そのためにきちんと勾配をとる。
この合掌造りの屋根と外壁の構造は、屋根を急勾配にすることで雨水が家の中に侵入する前に、茅葺屋根の細長い茅から茅へ伝わって、雨水を落としてしまいます。そのため雨漏りしないのです。
雨が降るたびに自然と外部への逃げ道である水の通り道ができているのです。防水シートなどの新建材は一切、使用してはいません。
侵入口から雨水が侵入しないように、板金処理で塞いで被せるとか、そういった余計な事は一切していません。
日本の伝統的建築工法は「柔構造」による建物が主流です。ベースとなる柱を軸に梁をホゾと呼ばれる加工を行い、木だけでがっちり組みます。柱が建物の荷重を支え、梁が横揺れ、縦揺れの際にかかる力を受け、木のしなやかさが強い力を受け流し、元の形へ復元するのです。
伝統工法による外壁
「柔構造」の発想は一般家屋にも活かされていました。外壁は杉板などの含水率の高い木材を基礎土台の下側の方より上に向かって、少しだけ重ねて貼っていきます。これを下見貼り(下を見ながら張りますので下見貼り又は下見張りと言います)といいます。
そうすることで、杉板を重ねたことで段差が生まれ、垂直の壁に勾配が生まれます。これがあたかも合掌造りの屋根のような急勾配になっているので、外側の水分は流れやすく、それ以上内側の壁の中に水分が入り込まないようになります。
同時に重ねた部分が浸透する水分を吸い取ってしまうので、裏面にまでは水分が侵入しないのです。つまり、内側に水分の通り道ができないように、外側をつたわるように水分の通り道を作ります。
しかも、杉板を重ねる事により杉板と土壁の間に「隙間」が生じますので、湿気が外へ排出しやすい構造になります。
土壁は結露が生じにくい素材で通風性があり、木材にとって腐食しないとても良い環境。
この下見貼りの工法が現在のサイディングの基になりました。
この伝統工法と同じように、現在の窯業系サイディングを下見貼りのように重ねていくようにすれば、良いのですが、窯業系サイディングやセメントボード、サイディングボードのような外壁材は重ねると折れやすく、割れやすいので、重ね貼りするというより柱壁にぴったりつけて柱壁と平行に施工していく方法(コストも安い)になってしまいました。
ちなみに昔はサイディングではなく、屋根スレート葺きの屋根材用を外壁材として下見張りのように施工していました、その時代は雨漏りする新築住宅は少なかったのですが、見た目が高級感がなく貧弱な見栄えだったので、その方法は既に廃り、無くなりました。